2011年8月1日月曜日

智真長老

第四回に登場する、五台山文殊院の長老。第三回で鄭屠を殴り殺して渭州を抜け出した魯達は、代州雁門県で歌うたいの金親子と再会する。娘の金翠蓮が、土地の有力者である趙員外の妾となっていたので、魯達もそこにかくまわれることになったのである。趙員外魯達に出家を勧める。出家とは俗世とのつながりを断つことだから、犯した罪も赦されるのである。また免税の対象にもなるため希望者は多く、普通はなかなか出家は許されない。しかし、幸い趙員外は「出家許可証」ともいうべき「五花度牒」を、大金をはたいて購入していた。自分の代わりに誰かを出家させて、これをもって功徳を積んだことにする金持ちが多かったのである。

そんな次第で魯達が向かったのが、趙員外が先代から多くの喜捨をしている五台山文殊院であった。その山をとりしきるのが、この智真長老である。首座や監寺などが魯達の人相風体の悪いのを見て、その入山に反対する中、長老一人は入山を許すばかりか「智深」という自らの名から一字を取った法名を与える。更に、魯智深が禁酒の戒律を破った挙句大暴れをした際にも、これをかばう。流石に二度目はかばいきれずに追放を認めるが、この時も魯智深の未来を予言した四句の偈を送ったうえ、身の落ちつけ先まで面倒をみてやるのだ。

これらの行動は、魯智深が108の宿星の一人であることを知ってのこと、ということになっている。また、酒に酔って誰にも止めようのない魯智深を一喝で黙らせるシーンなどは、相当の人物であることを窺わせる。ところが、魯智深の追放を訴える首座に対する言葉を見ると、「何を言うか、趙檀越の手前もあるぞ!」と俗っぽい。また、魯智深を追放するにあたっても、弟弟子である東京大相国寺の智清禅師におしつける。智真長老のほうが立場が強いわけだから、智清禅師としては断ることもできず、全く迷惑千万な話であるはず。そう考えると、評価の難しい人物かもしれないが、その辺はまあ、気にしない、気にしない・・・。

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